同じ家なのに、不動産会社によって査定額の差は、1000万円を超えていました。
これは、私たち夫婦が20年住んだ家を売ったときに、実際に目にした数字です。
最近、金利の上昇で「売りやすい不動産と、そうでない負動産に二極化していく」というニュースを見かけるようになりました。家をどうするか、意識が向いている方も多いのではないでしょうか。
このブログでは、二世帯住宅を建ててから売却するまでの一部始終を連載で書いてきました。でも実は、まだ書いていなかったことがあります。
それは、売却活動の「本当の最初の一歩」。
私たちの家の売却は、一括査定サイトから始まりました。今日は、その入口の部分を正直に書きます。これから家を売ろうかと考え始めた方の、最初の不安を少しでも軽くできたら嬉しいです。
すべては一括査定サイトから始まった
家を売ると決めたものの、どの不動産会社に頼めばいいのか、まったく見当がつきませんでした。
そこで使ったのが、一括査定サイトの「イエウール」です。申し込んだのは4月のことでした。
一括査定サイトというと、「営業電話が鬼のようにかかってくるのでは」と心配される方が多いと思います。私も身構えていました。
でも正直に言うと、負担に感じることはほとんどありませんでした。
理由は、申し込む前にYouTubeや書籍で売却の基礎知識を入れておいたからです。知識があると、電話は「かかって困るもの」ではなく「聞きたいことを聞ける機会」に変わりました。実際、最初に電話をくれた会社には、こちらから疑問をぶつけることができて、むしろありがたいくらいでした。
仕事が忙しく、日中は電話に出られない夫には、無理に電話をかけてこない会社がほとんどでした。その代わりメールで丁寧に情報を送ってくれて、夫は自分の時間にじっくり読んで比較できたようです。
先に知識武装をしておくこと。これが一括査定を「怖いもの」にしない、いちばんのコツだと思います。
査定額の差は、まさかの1000万円超え
査定は、イエウール経由で知った2社に、お世話になっていた専門家からの紹介で知った業者1社、以前からおつきあいのあった業者1社を加えて、合わせて4社にお願いしました。
出てきた査定額を並べて、目を疑いました。いちばん高い査定といちばん低い査定の差が、1000万円を超えていたのです。
同じ家で、同じ土地で。それでこの差。
しかも、飛び抜けた高値をつけてきたのは、意外な相手でした。当時、自宅の賃貸仲介をお願いしていた業者だったのです。まさか自分のところに売却の相談が来るとは思っていなかったようで、「もし媒介契約が取れたら儲けもの」とばかりに、思い切り高い数字をぶつけてきたのでした。もちろん、実際にその価格で売れる根拠はありません。
ちなみに、この業者を除いた残り3社の間でも、査定額には数百万円単位の差がありました。査定とは、それほど会社によって違うものなのです。
高い査定額は、売主の気を引くための数字であって、売れる価格の約束ではない。身をもって知りました。
もし1社にしか査定を頼んでいなかったら。もしその1社が「釣り査定」の会社だったら。私たちはこの1000万円を超える開きの存在すら知らないまま、売却を進めていたはずです。
複数社を比べたからこそ、おかしな数字に気づけた。私が一括査定を使って良かったと思う、いちばんの理由がこれです。
専任ではなく「一般媒介で3社」にした理由
不動産会社と結ぶ媒介契約には、大きく分けて「専任媒介」と「一般媒介」があります。専任は1社だけに任せる契約、一般は複数の会社に同時に頼める契約です。
不動産会社はたいてい専任を勧めてきます。でも私たちは、あえて一般媒介で3社と契約しました。
内訳は、イエウール経由の1社、紹介で知った1社、そして物件を広く知ってもらうために後から声をかけた大手1社です。つまり、査定をお願いした4社のうち2社とは、契約しませんでした。1社は、あの高値をつけてきた賃貸業者さん。もう1社については、次の章でお話しします。
一般媒介にした理由は2つあります。
1つは「囲い込み」を避けるため。専任にすると、その会社が自社で買主も見つけて手数料を両方から取ろうとして、他社からの問い合わせを断ってしまうことがあるのです。これは事前の勉強で知っていました。
もう1つは、買主につながる窓口を広げるため。3社が同時に動けば、それだけ多くの人の目に物件が触れます。
結果から言うと、この判断は本当に間違っていませんでした。その理由は、このあとお話しします。
査定から契約まで、業者のいろいろな顔を見た
査定から媒介契約までの一連の過程で、不動産業者のいろいろな顔を見ました。
いちばん忘れられないのは、優しそうな白髪の不動産業者さんです。結構お年を召した、いかにもベテランという風貌の方でした。しかもこの方、お世話になっていた専門家からのご紹介でつながった業者さん。紹介という安心感に、ベテランの風貌。疑う理由が、どこにもありませんでした。
その方は「専門家に建物を診断してもらうと安心して売れますよ」と、10万円のインスペクション(建物診断)を勧めてきました。幸い、この家を建ててくれた建築士さんとのご縁が続いていたので相談したところ、「不動産業者がそれを言ってくるなんて」と一言。おかげで踏みとどまることができました。この件は、インスペクションの記事で詳しく書いています。
同じ会社は、仲介手数料の説明でもおかしなことを言ってきました。ところが、こちらが「3%+6万円ですよね」と正しい計算式を口にした途端、「もちろんその計算です」と、しれっと態度を変えたのです。
穏やかな白髪の笑顔の裏で、この売主はどこまで知っているのか、細かく値踏みされていたのだと思います。
それから、威勢のいい若い営業マン。査定のときは大きなことを言っていたのに、その後ぱったり連絡が取れなくなりました。契約に至らなかったもう1社が、ここです。
そして、後から契約に加えた大手は、立派な看板とは裏腹に、まったくと言っていいほど動いてくれませんでした。
業者選びで大切なのは、会社の規模でも、査定額の高さでも、紹介の有無でもない。不動産の世界は、魑魅魍魎が渦巻いている——身をもって知ってしまいました。
売ってくれたのは、いちばん小さな地場の業者でした
では、最終的に買主を見つけてくれたのはどの会社だったのか。
イエウールで初めて知った、小さな地場の不動産会社でした。この街に何十年も住んでいた私たちでさえ、存在を知らなかったお店です。一括査定を使わなければ、一生出会うことのなかったご縁だと思います。
この会社の対応は、他とはっきり違いました。
最初の電話から、担当者ご本人。私の質問にその場で答えてくれました。電話に出られない夫には無理に電話をせず、メールで資料を送ってくれる。そして最初から最後まで、ずっと同じ方が窓口でした。
一方の大手は、電話をくれる人と営業に来る人が別。話が通っていないこともありました。
この経験から、私なりの「業者の見分け方」を3つ挙げるなら、こうなります。
・査定額の高さで選ばない(高い数字は釣りかもしれない)
・会社の看板ではなく、担当者を見る
・最初の連絡から、同じ担当者が一貫して向き合ってくれるか
3つめは、初回の電話やメールの時点で誰にでも確かめられます。よかったら覚えておいてください。
高めスタート、2度の値下げ、そして12月25日
売り出し価格は、相場と思われる額よりも少し高めに設定しました。値下げすることをあらかじめ見込んだ上での戦略です。値付けと値下げの経緯は、連載の「2度の値下げを振り返って」で詳しく書いています。
1度目の値下げでは、大きな動きはありませんでした。
そして2度目、思い切って下げた直後のことです。申し込みが入りました。即、です。
あまりの早さに驚きました。しかも、申し込みだけではありません。次の段階の売買契約と手付金の支払いまで、迷いなく一気に進んだのです。手付金100万円を、ためらいなく。
あとで分かったのですが、その買主さんは売り出し当初からずっとこの家を見ていて、価格が自分の基準まで下がった瞬間に動いたのでした。
買い手は、こちらからは見えないところで、じっと粘っています。だから値下げは段階的に、一度の幅は控えめに。これは声を大にしてお伝えしたい教訓です。
買主が決まったのは12月25日。イエウールに申し込んだ4月から数えて、およそ9ヶ月の道のりでした。海外赴任を控えていた私たちにとって、日本にいるうちに、年内に話がまとまったことは本当に大きな意味がありました。
自己採点は80点。そして、もう二度とやりたくない
最後に、種明かしをひとつ。
買主さんは、不動産会社を経営する社長さんでした。ご自宅として、この家を買われたのです。
つまり、相手はプロ。相場を知り尽くした方が、底値をじっと待って、動いた。私たちの最後の値下げ幅が少し大きすぎたことは、たぶん向こうがいちばんよくご存じだと思います。今振り返れば、もう少し小さな値下げでも買っていただけたはず。それが、私の自己採点80点の、減点20点の中身です。
でも、プロが「自分の家に」と選んでくれたことは、この家への何よりの評価だったとも思っています。
そして私たちも、最後に取るべきものを取りました。
引き渡しの後に不具合が見つかった場合、一定期間は売主が費用を負担して直す決まりがあります(契約不適合責任といいます)。これを免除してもらえないか——私が言い出し、夫と話し合って、ダメもとで仲介の担当者さんに電話でお願いしてもらいました。わが家では、業者さんとの窓口はいつも夫の役目だったのです。
答えは、快諾でした。
給湯設備のことなど、引き渡し後の不具合を心配していた夫は、心から安堵していました。この免責のおかげで、私たちは後ろ髪を引かれることなく、安心して海外に出発できたのです。
言うのはタダ。最後のお願いは、ダメもとでも口に出してみる価値があります。
家を売るのは、本当に難しい。正直、もう二度とやりたくありません。知識を入れて、業者を比べて、作戦を立てて、それでも最後は、良い買主さんに巡り会えた運に助けられました。
でも、もし何の準備もしていなかったら、せっかく巡ってきた運も、掴めないまま逃していたかもしれません。その準備の最初の一歩が、私たちの場合は一括査定サイトでした。
思えば、お金のことは、学生時代には誰も教えてくれませんでした。私たちシニアは、お金の教育を受けてこなかった世代です。
だから、大人になってからの知識武装。私は50代から学び直して、ここまで来ました。
これが、家を一軒売り終えた私の、いちばんの教訓です。この記事が、これから家を売るあなたの最初の一歩を、少しでも軽くできますように。
この記事でお話しした一括査定は、9ヶ月におよぶ売却物語の、ほんの入口です。このあとの一部始終は、こちらの連載にまとめています。
▼二世帯住宅を建ててから、売って手放すまでの全記録

最後まで読んでいただき、ありがとうございました🌿
🟡この記事を書いた人:タマキ
日光アレルギー歴17年。日差しが苦手なのに、縁あってマレーシアへ移住してしまいました。 動き回るせっかちな夫と、のんびり日陰を選ぶ私のシニア夫婦ふたり暮らし。
「快適にすごす工夫」を探しながら、日光アレルギーのこと、日々の暮らし、無理しない旅の記録を綴っています。
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