娘の巣立ちが教えてくれたこと(後編) 〜夫婦ふたりの再出発と、宝物の手紙〜


娘が家を出てから、私たち夫婦もまた、自分たちの暮らしを見直すようになりました。

最初は、ずっと今の家に住むつもりでした。親や祖父母の近くで長く暮らしてきた場所を離れるなんて、想像もしていませんでした。

でも、もういつだったかも思い出せないのですがある日ふと、近所の方との会話のなかでこんな場面があったことを思い出しました。

「私はずっとこの家に住むから」

ご近所さんのその言葉に、なぜか違和感がありました。
心のなかで私はこう思ったのです。

「え〜、そうなんだ。私はどうだろう、ずっとここに住んでるか・・・分からないな」

あの瞬間ふと心に浮かんだことが今の暮らしへと、もしかするとつながっていたのかもしれません。

また、ある本の影響で始めた「持ち物を減らし、身軽に暮らす」断捨離も、結果的に引っ越しに大いに役立ちました。
20年間住んだ家は物であふれかえっていましたし、夫婦ふたりの暮らしに必要なのはコンパクトな空間で充分でした。
今思えば、あのタイミングで断捨離に向き合えたことも、不思議なご縁だったように思います。

それから今、縁あって福岡で暮らしています。

「やっぱりこうなったか」という納得感もあります。
人生は、自分の知らないところで静かに動き始めているのかもしれませんね。


娘が大学進学で家を出るとき、私たち夫婦に一通の手紙を残してくれました。

それは今でも大切に保管している、私の宝物です。

断捨離を進めて、思い出の品もほとんど写真に収めて整理しましたが、この手紙だけは現物を手放せずにいます。

手紙にはこう書かれていました。

  • 父には「自慢の父親です」
  • 母には「悪口も言ってきたけど、お母さんの子どもで良かった」
  • そして二人には「18年間育ててくれてありがとう。ちゃんと一人前になって帰って、お父さんお母さんを絶対に楽にする」

こんな言葉を、まっすぐにくれるなんて。
大学費用のこともあって、娘自身もきっと大きなプレッシャーを感じていたと思います。

でも、それでもこうして言葉にしてくれたことは、何よりもうれしく、ありがたかった。
今も、思い出すだけで胸があたたかくなります。


娘の巣立ちは、たしかに「寂しさ」から始まりました。
でもその後には、自分自身や夫婦としてのこれからの生き方を見つめ直す時間が待っていました。

巣立ちは終わりではなく、「もう一度、自分たちの人生を育て直す」きっかけだったのかもしれません。


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